レモンとフラミンゴ

スタートアップ/ベンチャー/イノベーション/起業/中小企業あたりに興味がある人間です。その辺りについてちょこちょこ書いたりする予定です。

【日本・世界比較まとめ】Forbes Midas Listから紐解く成功するベンチャーキャピタリストの共通点とよく聞く「VCあるある」は本当なのかという考察

先日、個人的な興味からVC(特に、フォーブスが発表しているMidas List*に掲載されているような優秀なVC)に関するリサーチを行なったので、記事にまとめて解説をしてみます。

*...日本版だとMidas Listは「最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」というタイトルで発表されています。

 

そもそも興味を持ったきっかけは、「優秀なVCって何か特徴があるんだろうか」というのと、巷でよく聞く「優秀なVCに関する通説」みたいなものが、果たして本当なのかな、と気になったからです。

 

【巷でよく聞く通説の一例】

・スタートアップの世界は若い人が中心、おじさんVCはあまり見かけない。活躍しているVCは青年〜壮年(20s〜45s)層が多い。
・最近、中国人VCの活躍が目覚ましい
・海外優秀VCは博士レベルばっかりの高学歴
・VCとして成功するのは元起業家。起業経験がないVCはダメ
・VCになるにはまず事業会社で経験を積み、それなりの実績がないとダメ

 

 

実際のところ、活躍するVCや優秀なVCにはどんな共通点があるのでしょうか。

 

ソースとしては、Forbesのミダスリスト、BloombergのExecutive Profile & Biography、あとはCrunchbase、Angellist、entrepediaなどを中心に情報を集めてみました。

 

それでは、調べてみた中で個人的に面白いなと思った調査結果を、一部抜粋してご紹介します!

 

【男女比】

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世界的には女性VCもすごく増えてきた印象があったんですが、まだまだMidas Listに載ってくるレベルの方は少ないんですね。メアリー女史とか、いつもの古参だけでした。

 

 

【年齢】

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日本だと結構若いVCが増えていて、イベントでもよく見かけますし、一部の方による華々しいリリースも時々見かけるイメージなので、通説の「・活躍しているVCは青年〜壮年(20s〜45s)層が多い」もあんまり疑っていなかったんですが、世界的に見ると、ランク入りしたVCの中では34歳以下の方って1人もいらっしゃいませんでした

平均年齢は48.9歳、中央値でも48.5歳ということで、中年VCが活躍しているようです。

 

そして意外と(?)日本のVCは正確な年齢が公表されていない事が多く、調べられませんでした…。男性が中心なので、年齢について気にする方は少ないと思うんですが、どうなんですかね。
一方、世界ランキングの方は家族構成(子供が何人かとか)まで公開されていて、それはそれで、そこまで公開していいものなのか、といつも感じます。笑

 

 

【国籍(市民権)】

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依然としてアメリカに市民権がある方がほとんどですが、「・最近、中国人VCの活躍が目覚ましい」というのは本当のようで、50人中の内訳はアメリカ人42名、中国人3名、香港人1名、その他4名です。来年には、もっとランク入りしている中国人・華僑VCは増えてくるんじゃないでしょうか。

 

 

【最終学歴】

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日本は不明な方を除き、大学卒(バチェラー、学士)という方が最も多かったです。世界的には、Techcrunchなどによく登場する著名VC達のイメージが先行するからか、「・海外優秀VCは博士レベルばっかりの高学歴」というイメージがある方が結構多いと思うんですが、ドクター(博士)をお持ちの方は意外と少なくて、マスター(修士)が最も多かったです。

 

 

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ただ、マスター(修士)レベルで見ると、複数の修士号を持っていたりする方もちらほらいらっしゃいました。

また、バチェラー(学士)についても、B.A.S.と言って、ArtとScience両方の学士を持っている方が94%でした。めちゃくちゃざっくりした説明をすると、日本で言う文系と理系両方の学士を持っている方ということです。

両方勉強するには4年で卒業は難しく、5年で卒業する事が多いようです。
アメリカやカナダの大学で見かける事が多いイメージですが、ここ数年で、中国でも大変人気が高まってきています。

 

j.people.com.cn

 

日本のVCって、残念ながら「業界理解が足りない」「技術理解が足りない」「事業理解が足りない」という批判を受けることがちらほらある気がするんですが、結構ここに起因しているかも?と言う気も…。

もちろん、日々独学されている方が多いと思いますが、やっぱり学生の頃から「文系理系両方を学ぶのが当たり前で、学ぶことに抵抗がない」状態になるというのは強いよなーと思います。日本でもこのシステムを導入する大学が増えたらいいですね。

 

 

【起業経験】

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・VCとして成功するのは元起業家。起業経験がないVCはダメ」という通説はどうやら違いそうです。そもそも起業経験者すら日本は1人、意外と世界も3割を切っていました。

合わせて、Midas Listのランクとの相関関係も調べてみましたが、関係は見られませんでした。どうやら、起業家とVCで成功に必要な力は異なるようです。

あと元起業家の方は、VCよりはご自身のお金で、エンジェルとしてご活躍されていらっしゃるのかな?というイメージもあります。

Angelのrankとかどこかにないのかなあ…?どういう起業家が、シリアルアントレプレナーではなく、エンジェルとしてご活躍されるのかは興味があります。

 

 

【ファーストキャリア(業界別)】

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この結果は、ジャフコさんなどの新卒VCにとっては明るい情報ですね(笑)。「・VCになるにはまず事業会社で経験を積み、それなりの実績がないとダメ」という通説は、JAFCOのVCの先輩達がきっちり成果を出してくれたので、日本では見事吹き飛ばされました。

日本だとジャフコ等が新卒採用を行っておりますが、ランク入りした22人のうち、新卒でVCになった方が9人いらっしゃいました。

 

ただ、世界ランクで見ると、新卒VCはゼロでした。転職組の場合は、日本でも世界でもコンサルまたは金融出身者が多かったです。

 

 

というわけで、本記事で紹介した通説は以下の通りとなりました。

【巷でよく聞く通説の一例】

・スタートアップの世界は若い人が中心、おじさんVCはあまり見かけない。活躍しているVCは青年〜壮年(20s〜45s)層が多い。→×。

・最近、中国人VCの活躍が目覚ましい→◎。

・海外優秀VCは博士レベルばっかりの高学歴→△。

・VCとして成功するのは元起業家。起業経験がないVCはダメ→×。

・VCになるにはまず事業会社で経験を積み、それなりの実績がないとダメ→△。

 

 

 

なお、SlideShareにてフルバージョンのPDFを公開しております。他の調査結果も掲載しておりますので、気になる方は、よかったらこちらからのぞいてみてください。

 【日本・世界比較】Forbes Midas List上位のVCに関するリサーチ